Mk-Ⅱです。
ここからは『ゲート処理:実践編』となります。
基礎編で紹介したゲート処理の手順に従って、実際にどのような処理を行うのかを説明します。
ゲート処理の説明で使用するガンプラはこちらです。
『MG MS-07B グフVer.2.0』
これまでの経験から”パーツが大きく”、”鮮やかなカラーリング”のガンプラはゲート処理の跡が目立ちやすい傾向にあると感じていました。
そのため、ゲート処理の題材として敢えてこのガンプラを選んでみました。
ゲート処理の手順
まずはおさらいです。
『ゲート処理の手順』は以下の通りです。
- ランナーの準備
- ニッパーによるパーツの切り離し
- 薄刃ニッパーによるゲート跡のカット
- デザインナイフでゲート跡を整える
- #800で全体をヤスリがけ
- コンパウンド:粗目による研磨
- コンパウンド:細目による研磨
- コンパウンド:極細による研磨
これまでにも説明した通り、Mk-Ⅱが行うゲート処理はパーツの表面処理まで含みます。
そのため作業量は多くなりますが、ゲート跡はかなり目立たなくなると思います。
そして、さらにここからゲート処理を大きく3つのパートに分けます。
- 『前処理』:ゲート処理前に行う準備
- 『切り出し系』:ニッパーやデザインナイフなどを使用したパーツの切り出し
- 『研磨系』:ヤスリやコンパウンドなどを使用したパーツ表面の研磨
前処理
箱を開封
ガンプラ製作は1つめのパート『前処理』から始まります。
前処理で行うことはランナーからパーツの切り出しを行うための準備です。
では、いきなり前処理のキーワードから先に紹介します。
白化は箱を開けた瞬間から始まる!
どういうことなのか?
まずはこちらをご覧ください。
① ガンプラの箱を開ける
② 中身を取り出す
③ 袋からランナーを取り出す
誰もがこのようにしてガンプラを開封すると思います。
取り出したランナーをよーく観察してみてください。
そうなんです( ゚Д゚)!!
これが前処理のキーワードとしてあげたいこと、”白化は箱を開けた瞬間から始まる!”です。
正確には箱を開ける前からすでに白化を起こしてしまっている箇所もあります。
これは製品の性質上仕方のないことなので、避けることはできません。
しかしながら、開封前の白化は防げなくとも開封後の白化はある程度抑えることができます。
白化を防ぐことはガンプラの完成度に直結します。
また、白化に対して追加処理をしなくてもよいので作業効率も上がります。
基礎編でも紹介したように一度白化させてしまうと完全には元に戻りません。
ガンプラの完成度や今後の処理を考えると出来るだけ白化は抑えたいところです。
ゆえに、ランナーの取り扱いは可能な限り慎重に行う必要があります。
ランナーの準備
これはゲート処理にあまり関係がありませんが、製作前にもうひと手間かけます。
これから説明する準備を事前にしておくとガンプラ製作が捗ります。
事前の準備とは、ランナーへの『タグ付け』です。
各ランナーはアルファベットで振り分けがしてあります。
しかし、これがなかなか見えにくい。
そこで、上の写真のようにタグをつけておくと、どのアルファベットのランナーなのかがすぐにわかります。
ランナーにタグをつける方法は色々あると思いますが、Mk-Ⅱはタグとして百均で購入した付箋を使っています。
特にMGやRGはランナーの数が多いので重宝しています。
そして、各ランナーの管理には『ランナー立て』を使用します。
写真のようにランナーを立てておくと、タグを見てすぐに取り出すことができますし、ランナー同士で引っ掛かることもありません。
と考えているのですが、実はまだいいランナー立てに巡り合えていません。
色々と試していますが、どれもしっくりこないのです。
いい情報がありましたら教えてください。
切り出し系
ランナーから切り出し
前処理の次は『切り出し系』です。
最初に行うのは『ランナーからの切り出し』です。
それほど難しいことではないのですが、いくつか注意点がありますので説明していきます。
ランナーの切り出しには『通常のニッパー』を使います。
ゲートの中には太いものも多いので、繊細な刃先をもつ薄刃ニッパーの使用はおすすめできません。
ランナーからの切り出しはいきなりパーツの根元から切るのではなく、上の写真のようにゲートを一部残してから行います(白線部分)。
これには訳があって、いきなり根元から切ってしまうとその衝撃でゲートの付着部分に白化が起きてしまうからです。些細なことのように思えるかもしれませんが、衝撃で白化することはよくあることです。
また、無理にニッパーを入れてしまってパーツを抉ってしまうこともあります。
そうなると修復が大変なので、ここは丁寧なカットを心掛けるようにしましょう。
パーツはランナー上に複数のゲートで固定されています。
目的とするパーツがどのように固定されているのかを確認し、カットする順番を考える必要があります。
写真のように最初は小さなゲートからニッパーを入れ、最後に最も大きなゲートをカットすることが基本となります。
これは太いゲートを先にカットするとその衝撃で小さなゲートの根元が白化してしまうためです。
他にゲートの形状そのものにも注意を払う必要があります。
上の写真のような楔形ゲートの場合、パーツとの接点が非常に小さなものになっています。
そのため、ちょっとした衝撃で白化が起きてしまいます。
上の画像は楔形ゲートの図です。
パーツとの接点が極端に小さいことが分かると思います。
そのため、楔形ゲートを処理する場合は慎重にニッパーを入れる必要があります。
ゲートの2度切り
パーツの切り出し後はパーツに残ったゲートを処理します。
ランナーからパーツを切り出すときとパーツに残ったゲートを切り取るときの2度にわたってニッパーを入れることから『2度切り』といわれています。
2度切りは通常のニッパーでも処理できますが、ここでは『薄刃ニッパー』の使用をおすすめします。
薄刃ニッパーは切れ味がよいのでカット後の状態もよく、通常のニッパーと比べるとパーツを白化させてしまう可能性を大幅に抑えることができるからです。
パーツに残ったゲートを処理する場合は上の図のように何度かに分けてニッパーを入れます。
ニッパーを入れる回数が多いほどパーツに掛かる負担が分散され、白化が抑えやすくなります。
ニッパーを入れるときには、刃の当て方にも注意が必要です。
上の図のようにゲートの長辺に対してニッパーの刃を当てます。
このように刃をあてることによってパーツへのダメージを抑え、白化を防止することができます。
デザインナイフでさらに削ぐ
切り出し系の処理はこれで最後です。
ニッパーで取り切れなかったゲートを『デザインナイフ』で削ぎます。
上の図のようにデザインナイフで処理をします。
ニッパーの時と同様に、複数回に分けて残ったゲートを削ぎ落します。
複数回に分けることでパーツに加わる負荷を分散させることができるからです。
ナイフをゲートに入れるときはどうしてもゲート下方に向けて力を入れてしまいがちですが、心持ち上方に意識を向けて刃を入れるようにするとうまくいきます。
デザインナイフでは上の図のような向きで刃を当てます。
ニッパーとは真逆で、ゲートの短辺に対して刃をいれます。
ここは特に気を付けてもらいたいと思います。
刃を向ける方向です。
当たり前のことですが、刃先に指があると怪我をしてしまいます。
個人的には料理をするときの包丁のように扱うのが容易だと思いますが、写真のように自分から離れる方向に刃先を向けると安全です。
最後に、デザインナイフの刃はマメに取り換えるようにしましょう!
切れ味が落ちてしまうのはもちろんのこと、切れ味の悪い刃を使って作業すると思わぬ怪我をしてしまう羽目になりかねません。
切り出し系のまとめ
以上が『切り出し系』の処理です。
ニッパーやデザインナイフを使用してランナーからパーツを切り出し、残ったゲートの処理をします。
- ランナーからパーツをニッパーで切り出す。
- パーツに残ったゲートを薄刃ニッパーで切り取る。
- デザインナイフでさらに削ぐ
たった3つの工程ですが、全てのゲートに対して行うのでなかなか骨の折れる作業といえます。
しかし、ゲート処理をきちんとやっておかないとパーツがはまらなかったり、関節の可動が悪くなったりとガンプラの完成度に大きく影響を与えます。
そのため、じっくりと丁寧に処理する必要があります。
Mk-Ⅱはせっかちなのでこういう状況になると焦って雑になることがよくあります。
それで何度も失敗しました。
そのようにならないための切り出し系のキーワードはこちらです。
無理をせずに次の工程に任せる!
切り出し系のキーワードはじっくりとゲート処理に取り組むための心構えでもあります。
焦りから無理をしてギリギリまで攻めた処理をすると、いつか失敗をしてしまいます。
無理をしてギリギリまで攻めるよりも、微妙にやり残した処理は次の工程に持ち越しをしてじっくりと処理した方が失敗も少なくなるよね、ということです。
たとえば、薄刃ニッパーのゲートカットが甘かったけど、ここは無理をせずにデザインナイフで処理をするといった感じです。
どの処理にでもいえることですが、焦らずコツコツと処理をすることが完成度の高いガンプラを製作するための近道です。
研磨系
研磨系の基本
切り出し系の後は『研磨系』の処理を行います。
研磨系はその名の通りただひたすらに磨きます。
Mk-Ⅱのゲート処理はパーツの表面処理も含みますので、研磨するときはゲート部分だけでなくパーツ全体を磨くようにお願いします。
ヤスリがけなどの研磨系は小さな番手から大きな番手へと道具を変えながらパーツを磨くのが基本です。
番手を変えずに大きな番手だけで磨けばいいと考えてしまうかもしれませんが、大きな番手で磨くだけではパーツについた小さな傷を消すことはできても大きな傷を消すことはできません。
Mk-Ⅱが行っている研磨系の処理は以下の手法になります。
- #800でヤスリがけ
- コンパウンド(粗目)で研磨
- コンパウンド(細目)で研磨
- コンパウンド(極細目)で研磨
文字にすれば簡単そうにみえますが、パーツ全体を何度も磨くことになるので大変です。
しかも、ガンプラのディテールは非常に洗練されているので、相当細かい部位まで磨く必要があります。
しかし、この研磨系をやり遂げると完成したガンプラは劇的な変化を遂げます。
これはもう頑張るしかありません( ゚Д゚)!!
そのため、研磨系のキーワードはこちらです。
妥協せず、丁寧にコツコツと!
どんな処理でもそうですが、研磨系の処理では特に忍耐が必要です。
妥協することなくしっかりと磨きましょう!
#800のヤスリがけ
研磨系で最初に行うのは『#800のヤスリがけ』です。
前処理でパーツの扱いに気を付けつつ、切り出し系を丁寧に行えば、ヤスリがけは#800で十分です。
実験的に#800のヤスリがけの後に#1200のヤスリがけもしてみましたが、次の工程のコンパウンドを使用すればパーツ表面はヤスリ以上に研磨されるので、#800よりも大きな番手のヤスリがけは必要ないかなと思います。
ただし、#800のヤスリがけで消すことが出来ない傷がある場合は注意が必要です。
その場合は#800よりも小さな番手を使用してヤスリがけをしなければなりません。
コンパウンド
#800のヤスリがけをすれば、ゲート処理の跡はある程度目立たなくなります。
パーツの表面もプラスチック特有の安っぽい印象がかなり薄まります。
しかし、ガンプラの完成度という点においてはまだまだ物足りません。
そこで、より完成度を高めるために『コンパウンド』を使用します。
Mk-Ⅱは、以下の3種類のコンパウンドを使用しています。
- 粗目:#600
- 細目:#3000
- 極細目:#8000
ヤスリがけの番手は#800でしたが、コンパウンドの番手は非常に大きいです。
それだけ細かく、滑らかに磨くことができます。
写真では少しわかりにくいかもしれませんが、細目で処理した段階でパーツ表面にはやや光沢感がでます。
極細目を使うとさらに光沢感が増し、見た目も大きく変わってきます。
また、コンパウンドで磨くときは専用のクロスを使うことをおすすめします。
正直なところ、コンパウンドをつけて磨くのにはガーゼででいいだろうと甘くみていました。
しかし、専用クロスを使うと…
全然違う( ゚Д゚)!!
コンパウンドで磨くときには、コツがあります。
それは、
2度磨くことです( ゚Д゚)!!
1回目はクロスにコンパウンドをつけて磨きます。
そして、2回目はクロスを変えて何もつけていないクロスで拭き取るように磨きます。
1度だけではコンパウンドの効果をそれほど感じることができませんが、2度磨くことでパーツが見違えるように輝きだします。
まとめ
3つのキーワード
最後はゲート処理について『まとめ』てみたいと思います。
ゲート処理は大きく分けて3つのパートに分けることができます。
- 前処理
- 切り出し系
- 研磨系
前処理はガンプラの箱を開けた時からはじまります。
ゲートはほんの少しの衝撃でパーツとの間に白化を作ります。
切り出し系の作業を始める前からゲート処理は始まっているといっても過言ではありません。
切り出し系はニッパーやデザインナイフを用いた処理です。
切り出し系ではパーツに与えるダメージをいかに抑えるかがポイントになります。
そのためはやる気持ちをグッと堪えて処理は少しずつ行います。
研磨系はヤスリとコンパウンドなどを使用してひたすら磨きます。
ガンプラには細かなパーツや繊細なディテールが盛りだくさんです。
忍耐強く丁寧な処理をすることでガンプラの完成度を高めます。
- 白化は箱を開けた瞬間から始まる
- 無理をせずに次の工程に任せる
- 妥協せずに丁寧にコツコツと
この3つのキーワードに留意して、ゲート処理に取り組んでみてください。
各処理によるガンプラの違い
- 前処理
- ニッパーでパーツの切り離し
- 薄刃ニッパーでのゲートカット
- デザインナイフでのゲート跡処理
- #800でのヤスリがけ
- コンパウンド(粗目)による研磨
- コンパウンド(細目)による研磨
- コンパウンド(極細)による研磨
上記は『ゲート処理の手順』です。
では、実際に各処理を施すことでガンプラの見た目がどのように変化していくのかを追いかけてみましょう。
ランナーからパーツを切り出し、ゲート処理をしただけの『仮組みの状態』です。
まだパーツ表面を磨いていないガンプラの素の状態です。
『#800でヤスリがけ』をしました。
プラスチック独特の安っぽい印象は消えましたが、パーツ表面がヤスリがけの傷でザラっとしています。
『コンパウンド:粗目』で研磨しました。
MK-Ⅱの使用する粗目は#600なのでまだパーツ表面は粗い感じがしますが、ヤスリがけよりも滑らかな印象を受けます。
『コンパウンド:細目』で研磨しました。
パーツ表面の傷も目立たなくなり、ほんのりと光沢感が出ています。
『コンパウンド:極細目』で研磨しました。今回のゴール地点です。
光沢感が際立っていて、大きく印象が変わりました( ゚Д゚)!!
写真だとわかりにくいのが残念ですが、肉眼では見違えるようにカッコよくなりました。
丁寧なゲート処理はガンプラの完成度を高めてくれることがわかります。
最後に
最後までご覧頂きありがとうございました。
『ゲート処理:実践編』はいかがでしたでしょうか?
実践編ではゲート処理の手順に沿って各処理の詳細を説明しました。
基本的な処理ですが、これだけでもガンプラのクオリティは大きく変わります。
しかし、今回紹介したゲート処理はあくまでも基本です。
次回はこの基本をベースにして発展させた『応用編』です。
Mk-Ⅱが実践の中で感じたゲート処理をするうえで役に立つ知識を紹介したいと思います。
▶ NEXT
▶ BACK